○○○ ふたり〜鉄也&ジュン〜 ○○○


月乃

 

「ほら遅れてるぞ!しっかりついてこいよ!」
そう微笑んで彼は、彼女に手を差し出した。
早朝の山の中である。鉄也とジュンは休暇をとり、山荘に来ていたがいつもの習慣でジョギングに出ていたのだった。
ジュンは今日に限ってなぜだか遅れがちになっている。
「待ってよ…鉄也」
手をとろうとしたジュンはバランスを失いその場に座り込んでしまった。
様子がおかしいのを察知した鉄也はもどってくる
「具合悪いのか?」
「大丈夫よ」
ジュンは立ち上がろうとしたが無理だった。
「山荘へ帰って休もう」
言うが早いが鉄也はジュンをお姫様だっこで抱きかかえた。ジュンは赤くなり、「やめてよ…恥ずかしいから」と拒否する
だが鉄也はおろそうとしない。
「誰も見てねえよ…」
「やめてったら…鉄也」
赤くなりがら、足をジタバタさせるジュンをキスでなだめ、おとなしくしてろよと鉄也は微笑む。
二日ほど前にジュンは遭難者捜索隊に協力し付近の山へ籠もっていたのだ。そのときにひどい嵐にあい、どうやら風邪をひいたらしい。鉄也は所用で付近の大学の教授を訪ねて研究の要請をしていた最中だった…。
ジュンの心配は幸いにも山深い土地で早朝であることから人一人いなかった。
山荘についた鉄也はジュンをベッドに運ぶと朝食の用意にとりかかった。
「鉄也…いいわよ。私が作るから」
「いいから、いいからお前は寝てろよ…俺のメシはうまいからな」
シャクだわ…ジュンはベッドの中で頬を膨らませた…。そう、ごつい見かけにあわずに彼は料理や掃除やらけっこう細かいことが大好きでとてもうまいのである。特に料理の腕は一品で店を開いてもおかしくないほどの腕であった…。
鉄也はお粥と野菜スープをジュンの目の前に並べてスプーンで食べさせる。
「うまいか?どんどん食えよ」
「鉄也…私はそこまで重病人じゃないわよ(笑)。一人で食べられるから」
でもあっさり拒否された
「いいから、食わしてやるからジッとしてろよ」
嬉しそうに看病するところを見ると本当に面倒をみたいらしい…。
『もう…こういうとこ見せられると弱いのよのね…私は』
クスッと笑いつつもジュンは鉄也に甘えることにした。
「のどが乾いたの…お水をちょうだい」
すると彼は冷蔵庫からエビアンを出して口移しでジュンに与えてくれた。
「眠いからしばらく寝るわね」
そういうと子守歌まで歌いかねない彼のことだから、それは言わないでジュンは暖かい気持ちで眠りについた。
しばらくしてジュンが目を覚ますと部屋の中はがらんとしていた
「鉄也!いないの?」
ジュンは少し不安になるが頭をふって考え直した…。
『いやね…まだ戦いの中にいるみたいに感じちゃって…もう何年も前に終わったことなのにね』
ミケーネとの戦いは数年前に終わっている。今は前線を退いてはいるが、訓練は欠かさない。二人は救難活動や研究の仕事に現在は携わっていた。
ジュンは少し汗をかいたのでシャワーを浴びようとしてリビングの机の書き置きをみた。間違いなく鉄也の字で買い物にいく…と書かれてあった。冷蔵庫をみたがエビアン以外何もないのだ。
ジュンがシャワーを浴び終わり、ローブ姿で髪を乾かしているところで車の音がして鉄也が帰ってきた。
「お帰りなさい…何を買ってきたの?」
ジュンがびっくりするほど大荷物を彼は抱えていた。
「今夜はパエリアを作ってやるぜ!!  食べられるよな?」
嬉しそうな鉄也にジュンも自然と笑顔になる。
「まあ楽しみだわ♪」
これさ…買い物袋とともに鉄也がジュンに赤くなりながら渡したのは、赤いバラの花束だった…。
「今日はお前の誕生日だろ?だから」
恥ずかしそうにそれを差し出す彼に、ジュンはキスを浴びせた。
「そんな格好で…誘ってるのか?たまらねえよ…」
赤く下を向く彼に言われて初めてローブの胸元が開いているのに気づきいた。
「いや…もう…」
「そんな甘い声だすなよ…」
鉄也はジュンに何回もキスを求める。
「俺もシャワー浴びてくるから」
ベッドでうなづくジュンを残し、すぐそばで服を脱ぎ始める。
彼は暑くなるからといつも戸を半分開けてシャワーを浴びる。そんな鉄也の背中を眺めながら、密やかなる甘いひとときに満足そうに身をゆだねる彼女だった。

 

 

 



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