★☆★ SMILE! SMILE! SMILE!★☆★

 

今年の誕生日プレゼントの希望を聞いたら、
「カメラ! 一眼レフ!」
と、即答された。そんなの広報部に行けば、いくらでもあるし、なにより可愛げ無ぇ… 
「違うの! 自分だけのプライベートなカメラがほしいの」
へぇ、しかし、なんでまた… ああ、あれか。先週、街で偶然のぞいた、女性カメラマンの個展… 
花や子供の写真見て、えらく気に入ってたもんな・・・
しかし、感化されやすい単純なヤツだ。だいたい、カメラなんて、知ってるのか?
「失礼ね! 一眼レフでしょ… ポラロイドでしょ… …デジカメでしょ… …写ルンです…… え〜とぉ…」
ひとりでやってろ。 まあ、適当な物でも見繕っとくか・・・

安いカメラだったが、気に入ったようだ。マニュアル読んで、いじくりまわしてる。
そうなると、次は・・・
「ね、天気もいいし、出かけない? 近くでいいから」
やっぱりきた。撮影会かよ・・・ めんどくさいな・・・
「ほらほら、今日いちにちだけは、お姉さんの言うこときいてね」
1ヶ月早い位で、ずいぶんエラそうに・・・ ま、しかたねぇか。

えっ? これでいくのか? 車じゃなくて、自転車? せめて、バイクに・・・
「だ〜め。ゆっくりシャッターポイントを探すの。
車やバイクじゃ、早く通り過ぎて、いい場所みつからないもの」
はいはい、仰せのとおりに致します。そのかわり、ふたり乗りはいやだからな。
「では、しゅっぱ〜つ! とりあえず、河原の公園のほうまで、ダッシュ!」
ゆっくり探すんじゃなかったのかよ。
やっぱりあの個展のパクリだな・・・ ガキか花が目当てだ・・・
うわっ、早っ! お〜い、ちょっと待てよ〜
あ〜あ、スカートまくりあがってるぞ・・・ ホント、色気もな〜んもねぇ・・・
それにしても、うれしそうな顔しやがって・・・
「甲児くん、なんだか楽しそうね。ウフフ、気持ちいいもんね」
バカいうな、おまえにつられただけだよ。ったく・・・
・・・そんなに、ニヤけてたかなぁ、俺・・・

「フフ、いたいた」
公園には、2歳から4歳くらいの子供が4人、ベビーカーに乗った赤ん坊が2人、
その母親たちが4人。ひとりは、俺好みの美人・・・
「すみませ〜ん。お子さんたちの写真、撮らせてもらってもいいですか?」
なんだぁ、名刺配ってやがる。スカウトマンか、おまえは・・・
「ほら、甲児くん、ボーッとしてないで、手伝って!」
そんでもって、俺はアシスタントか?  ったく、なにすりゃいいんだよ。
「赤ちゃん、笑わせてよ。得意でしょ、子供と動物は」
バカにしてんのか? まあ、例の美人の子だから、許してやるけど・・・
「うん、いい顔! 撮るわよ〜」
PASHYA!

2人の赤ん坊をさんざん撮ると、今度は砂場の子供たちが遊んでいるほうへ、
インスタントなカメラマンは向かっていく。
一丁前に、カメラを縦にしたり、体を曲げてみたり、近くに寄ったり、後ろにさがったりって、
たぶん、ズーム忘れてるな・・・ 
ん? カメラマンは、閉店か? 一緒に遊んでど〜すんだよ、砂の上に腰おろしちゃって。
泥団子屋始めやがった。おい、ハネてるぞ。あ〜あ〜、もう知らねぇ・・・
ガキたちより、喜んでやがる。 ありゃあ、完全に俺のこと、忘れてる・・・

お昼寝とやらで、子供らがいなくなると、予想通り,花に向かって営業再開。
紫陽花と、その他モロモロの名前のわかんねぇ花を、覚えたてのズームで写している。
でも、相手が動かないから飽きたのか、こっちに来る。不気味な笑いを浮かべ・・・
ゲッ、まさか・・・
「ねぇねぇ〜、撮ってあげる。はい、笑って!」
バ、バカ言うな、俺が撮ってやるよ、よこせ、そのカメラ!
「だめ! これは私が写すためのカメラ。カメラマンは、私だけ!」
うわぁ、やめてくれ〜、ハズカシイ・・・
「だいじょうぶ、誰もいないよ。宝物にするから、ね、ね、お願い」
アーッ!! クソー!! こうなりゃヤケだ!
ほれ、さっさと、撮りやがれ!
「ほら、ちゃんとこっち見て、目線だけでもカメラに向けて・・・
 顔が引きつってるよ、あ〜あ、もう、情けないなぁ。 
自然に笑ってよ、いつもみたいに・・・ ほ〜ら!」
この状態で自然になんてできるか! 誰もいないったって、大笑いしてるオマエがいるじゃないか。
それにいつもみたいって、どんなだよ!
「う〜ん。だめなモデルねぇ。しょうがない、あきらめるか」
うん、そ〜だ、そ〜だ。はぁ〜っ、よかった・・・
PASHYA!
「題。安堵」
そのまんまじゃねぇか。
ま、とりあえず、任務完了。
来月の俺の誕生日、クビ洗って待ってろよ。

「ブランコなんて、何年ぶりかなぁ〜」
また、勢いよくこいで・・・ 元気だなぁ・・・ 
今度はなんだ、滑り台か・・・ どれ、へー、こんなに狭かったんだなあ、ギリギリだな・・・
ジャングルジムもガキの頃は、もっと高く感じたのにな・・・
あの頃は楽しかったなぁ・・・ 公園がでっかく思えたっけ・・・
今は・・・ 
アハハッ、今も結構楽しいか。あの頃よりも、何倍もワンパクな連れがいるし・・・
楽しそうに、うれしそうに、走ってきやがる・・・
いい顔だ。
ホントに、写真に残しておきたいな。
・・・ いいか、俺だけが知っていれば・・・ ほかのヤツには、見せるんじゃないぞ、その顔・・・
PASHYA!
「ほら、今の顔よ、サイコーの笑顔。ね、なに考えてたの?」

 

おしまい

 

BACK