バレンタイン大作戦

月乃

 

「うーん…どれにしようかな?」
二月のデパートの特設会場は華やかな雰囲気で盛り上がっていた。女の子ばかりが集まっている売り場。そうバレンタインデーのチョコレート売り場である。
色とりどりのチョコレートを見ながら、さやかは考えていた。
「どれも似たり寄ったりなのよね…何か違うものはないのかな?」
一時間ほど売り場を周ったが気になるものはなかった。何か疲れた表情でデパートを後にするさやか。
帰り道に古本屋に寄った。絶版になってしまった小説が手に入り少しウキウキした…
「!これだわ!」
さやかがレジの側でたまたま手にした一冊の本…さやかはそれも一緒に買って店を出た。


「世界でただ一つのオリジナルチョコレートを作ろう!」

《ただしお金持ちに限ります。破産しても責任は持ちません》


「どういう意味かしら?」
さやかは怪しげな本に疑問を持ちながら帰宅した。

部屋に帰って早速本を開いてみる。
「えっ?南の広大な土地を用意する? 何よこれ?カカオ豆から作れということ?」
まさにその通り…世界でたった一つのチョコレートの作り方であった。

「お金持ちに限りますってこういう意味だったのね!南の土地はないけれど研究施設なら揃ってるわ!私も科学者の娘よ!やってみようじゃないの!」
かくしてさやかのチョコレート作りが始まったのである。
使われていない格納庫を改良し巨大な温室を作った。中は霧や雨を降らせる装置を取り付けて。
カカオの木を植えた。研究所内に熱帯のジャングルが出現した。
弓教授はいいのが出来たら研究所開発商品で売り出すからと娘を激励し、地元や近県の動物園からワニやコモドオオトカゲを借りて、即席動物園を始めた。弓親子のトンデモない活動に甲児は驚いたが、三博士はいつものことだと笑った。

戦闘以外はほとんど栽培に費やしたさやかにご褒美は山程やって来た。短期間で普通の3倍ものカカオ豆が実ったのである。収穫し、さらに研究所内に作ったチョコレート工場で大量生産に入った。

甲児くんだけのために…と始めたチョコレート作りは大掛かりなプロジェクトとなってしまったのだ!

それでもさやかは手製のカカオ豆でトリュフを作り、甲児の帰りを待つ。期待して帰って来た甲児は、
「さやかさん!豆から栽培してくれたんだって!サンキュー!」
と彼女を抱きしめた。
「ん…うまい!」さやかがいれたコーヒーと一緒にトリュフを頬張る甲児を見てさやかは満足だった。
だが…これだけでは終わらなかった…

その晩に開催されたバレンタインパーティーはさやかが開発した大量のチョコレートの試食会場となり、甲児やシロー、ボスらは食べ続けねばならなかったのである…

 

 

このジョークみたいな本は実在してました(^^;)昔図書館で借りたことがあります。


 

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