Valentine day in blue


 

「どうした、さやかさん。もう1時だぜ。」
甲児は論文を書く手を止めて後ろを振り返った。
さやかがそこにいた。手には紙袋を抱えている。

「邪魔しちゃった?」
「ん?いや・・・」
アメリカにやってきてはや一年。甲児はUFOの研究で忙しい日々を送っている。
さやかは巨大ロボットの研究を行っている。
研究テーマが違う二人は、日中なかなか顔を合わせる機会がない状態が長くなっていた。
「調子はどう?」
「うーん、ちょっと壁にぶち当たってる感じかな。」
「じゃあちょっと息抜きしましょう。」
そう言うとさやかは紙袋からビデオを取り出し、セットした。

「私も来週レポートの締め切りなの。ロボットの運動制御についてなんだけど、ヒントにならないかなと思ってAとZのビデオを見返してたの。」
「へえ。」
「久々に一緒にみてみない?」
ソファーに腰掛け、リモコンの再生ボタンを押すさやか。画面に現れるマジンガーZとアフロダイA。
「おおっ、懐かしい・・・」
甲児もさやかの隣に腰掛け、画面を眺め始めた。

画面に映し出される過去の戦闘シーン。ZとAがまるで甲児とさやかの巨大な分身のように協力して戦うシーンがテンポ良く編集されている。
食い入るように見つめる甲児。しかし、途中で異変に気づいた。
さやかがうつむいて肩を震わせている。
「どうした?さやかさん・・・」
さやかは答えない。
ひざの上におかれたさやかの右手に涙が落ちる。
「昔は毎日一緒にいたのに最近は会えないことが多くて。こんなにすぐそばにいるのに・・・」
「・・・さやかさん・・・」
「ごめんね、甲児くん・・・こんなこと言ってもしょうがないのにね・・・」
気丈に涙をぬぐうさやか。

「ずっとガマンしてたのに、このビデオ見てたらちょっとAとZに妬けちゃったの。」
照れ隠しに微笑む。
「・・・」
なんと言っていいかわからずあせる甲児。
「はい、これ。」
さやかは紙袋からキレイにラッピングされた小箱を取り出し、甲児の手に握らせた。
「これは?」
「もう!相変わらず鈍い人ね!今日は何日?」
「2月13日。」
「もう12時過ぎてるわよ。」
「2月14日・・・あっ!」
「やっとわかった?バレンタインデーのプレゼントよ。」
箱の中身はグラマシーニューヨークのチョコレートだった。

「さやかさん・・・ありがとう。」
「どういたしまして。」
見詰め合う二人。
甲児の左腕がさやかの細い腰に伸びる。
さやかの右手が甲児の肩に。
あとは言葉は要らない。

ブルーなバレンタインデーは一瞬で光り輝いた。

 

END

 

 

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