白衣はいかが?

上尾美奈

 

俺の名前は兜甲児。弁護士さ。といってもただの弁護士とは訳が違う。刑事の経験もある捜査の出来るっていうやつさ。組織に縛られるのがいやで刑事辞ったっていうわけだ。おまけに顔もいいし、もうもてもて。ほんと、俺ってかっこいい。でも、惚れた女一筋、純情をささげるってきめているからそんじょそこらの女に手だす気はないのさ。なかなかみつからないのが困る。
う〜ん、どうも風邪っていうやつをひいたみたいだ。ちょっとばかり無理したからな。これからも忙しいし、第一、くしゃみっていうやつはかっこわるい。さっさと病院行くか。

来るには来たが病院っていうところは面白くないところだね。この女医、なかなか美人ではあるが愛想ないね、金属のめがねって冷たい感じするし、髪はひっつめだし。 
カルテ見て意味深に笑っていたような気がするんだが。
「流行性感冒、いわゆる風邪ですね、少し熱高いですね。あと、睡眠不足で過労気味ですね。」
「さっさと、なおしたいんだけどな。」
「では、そちらに寝てください。右腕出しといて下さいね。」
ふん、このベット割と寝心地いいね。いったい、なにをするんだろう。
「はい、兜さん、点滴しますね。小一時間かかりますので、その間、休んで下さい。」
えっ、点滴、おっ俺注射だけだめなの。拳銃は恐くないけど、針は恐い。止めて!!
「ほら、大の大人がそんな恐がらないで。炎さん、そこ押さえて。ちくっで終わりますから。」
美人の看護婦さんに押さえつけられた俺。助けて!!
『ぎゃあああああ』
ううう、痛かった。でもこれで静脈に入ってしまったから終わり。寝てやる!!
「はい、こっちの上腕部に筋肉注射撃ちますね。これで熱は下がります。」
いい、下がらなくてもいいから止めて、お願い。
「動くと、点滴の針が痛みますよ。」
そんな、ああっ針が近づいてくる。おお神よ。
くくく…。この女医顔色一つ変えない。鬼!!
でも、注射のあとをやさしくもまれているうちに俺は眠ってしまった。
さすがに眠った後はすっきりしたさ。しかし、2度と病院なんてとこ来るもんか。
ん、あそこにいるのは弓さやかじゃないか?小学校の時の同級生。いわゆるおさなじみっていうやつか。彼女、女子校に進んだから、中学生になってからはほとんど会ってないけど。実は俺、彼女に惚れていた、といっても小学生のがきだったけどよ。もちろん、即声かけたね。俺って行動力あるもん。食事して、ホテルのバーで一杯やって…。
「なあ、この後、下行かない?」
カウンターの下で手を重ねて、ささやいた。女ならこの俺、断るずないもんね。いっそのことこのまま手動かしちゃおうかな。と、思ったらさやかのやつにっこり笑って答えた。
「悪いことすると、注射するわよ。」
『えっ?!』
「あら、いやだ、気づいてなかった?」
そう、いって髪をまとめると、めがね掛けた。えっええっー。さっきの女医?!
やっやめた、俺この世でこわいものは注射だけなんだ。やめ…れない、どうやら、俺本気で惚れたみたい。

 

END

 

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