Queen & Champion

竜崎 亮


「ジュンならともかく、さやかさんが、そんなのになれるわけないだろう!」
「そんなこと、やってみなくちゃわからないでしょう!!」
「へ〜ぇ、やれるつもりなんだ!驚いた!!そんなキツ〜イ性格で」
「何ですって!?もう一回言ってごらんなさい!!」
「ああ、何度でも言ってやるよ!さやかさんみたいな性格もスタイルも悪い奴がなれるわけないってんだよ!」
売り言葉に買い言葉だった。
きっかけはもう、とっても些細な事だったのだ。
そうして、始まってしまったいつもの痴話ゲンカ…。
周りはもう、慣れたもので、誰も止めに入ろうとはしない。
へたなことをすれば、とばっちりを喰うのが解りきっているからだ。
それよりも、いつ、ものが飛んでくるか解らない!という不安の方が大きく、周囲にある大事なものの避難をこそこそと始めていた。
今怒鳴り合っているこのふたり、これでも、一応婚約者同士なのだが…。
彼、兜甲児は、フォーミュラニッポンを代表するドライバーで、彼女、弓さやかは甲児の所属するチームのクルーのひとりである。
そして今は彼らが所属するチーム「マジンガー」の最終戦に向けてのミーティングの最中なのだった。



何がもとになったか、また誰が言い出したのか不明なのだが、各チームから2名の女性を出してもらい、 最終戦の期間中に観客、及び、関係者による投票でレースクイーンを決めるという、ミスコンもどきのイベントがこの年突然催される事になったのである。
そして、それは、最終戦終了後に行われる今期入賞者の授賞式会場において発表される事になっていた。
各チームから2名…。「マジンガー」からも1名はジュンに決まっていた。
だが、もう1名が決まらず、ジュンだけにしようかという話になったとき、誰からともなく、さやかの名前があがったのだった。
それを聞いた甲児は慌てた。パドック内をクルーとして走り回っているさやかが何度となく、カメラ小僧や女性遍歴のあるドライバーたちに声をかけられていたことを知っていたから…。
さやかの出場をやめさせようとした甲児が暴言を吐いた結果、前述のような騒ぎにまで発展したのであった。



結局、二人は仲直りしないまま最終戦を終え、授賞式を迎えた。
甲児の奮闘(?)も虚しく、選ばれたのは同一票を獲得したさやかとジュンだった。
これにはさやか自身も驚いたが、それ以上に困惑したのはさやかがなれるはずがない!と大げんかをしてまで断言していた甲児だ。
壇上に並んでいる6人中4人は、すべて同じチームなのである。
今期のチャンピオンと2位は、もちろん甲児と鉄也、見事レースクイーンに選ばれたさやかとジュン。
壇上の4人にフラッシュ攻撃がひとしきり続いた後、インタビューが始まった。
「おめでとうございます。兜さん。今期は、1位、2位ばかりか、レースクイーンのお二人までが同じチームからですね。 ましてやクイーンのお一人は婚約者ですし、喜びもいつもとは違うんじゃないでしょうか?」
「そりゃ、嬉しいですよ。本当に。でも、いいんですかね? モデル経験のあるジュンはともかく、こんな奴をクイーンになんか選んだりして…。後で悔やむことになると思うんですけどね…」
「バッチーン!!!」
言い終わらないうちに、甲児の頬をさやかの手が襲っていた。
とんでもなく、大きな音とともに…。



翌日のスポーツ紙には2枚の写真が対比するように並べられていた。
一枚は1位、2位の甲児、鉄也と、クイーンに選ばれたさやかとジュンがトロフィや王冠を手にしての記念撮影の写真。
そしてもう一枚は、さやかの手が甲児の頬を襲った瞬間のスクープ写真である。
タイトルはもちろん、「クイーンとチャンピオン」だった。



END



実際のフォーミュラニッポンや、レースクイーンがこんなものだと思わないで下さいね。
これはあくまでも、さやかさんのレースクイーンを書くための設定なんです〜。
……3位以降に付いては、???です。
あえて、書きませんでした。ので、何も聞かないで、ネ!!
でも…、Dr.ヘルを監督とするチームで、ドライバーがあしゅらとか、ブロッケンだったり、 早乙女博士が監督でリョウやハヤトがドライバーとか、 宇門博士のチームでデュークフリードが…なんて…(笑)
こんな奴等にレースさせたら、殆ど「キャノンボール」並みのクラッシュレースになりそうな 気がしません??


 

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