Diary

No.102

mio
ちょっと下に書いた、気恥ずかしい文章、手直ししても結局気恥ずかしいままだったけど、せっかくなのでここに貼り付けます。
もしも勇気が出たら、表にちゃんとアップする…かもしれません。
あるいは削除しちゃうかも??



『5分前』


 だから多分そうなんじゃないかと思ったのだ。
 滅多に食べられないようなご馳走とか、ふと見上げた空に浮かんでいた虹とか、通りすがりに耳に入ったストリートミュージシャンの澄んだ歌声だとか。
 そんなこんなに出会ったとき。
 一緒に食べて、見て、聴いて、楽しんで、語り合える誰かが今ここにいればいいのにと思うとき、いつも同じ顔が浮かぶのは。

 珍しく風邪なんか引いて、否応なくベッドに縛り付けられて。
 そんな時に「バカは風邪ひかないってウソだったのね」なんて悪態をつかれてでもそばにいてほしいと思うのは、やはり同じ顔だったりして。
  
 だから多分そうなんだろう。

 そう思ったらもう覚悟するしかなかった。
 あの顔が俺じゃない誰かを見つめて、俺じゃない誰かに見つめられて、幸せそうに笑いあうなんて姿を想像するだけでキレそうになる。
 そんなの独占欲としか言えないだろう。
 その独占欲が何によって生まれるかなんてことはもう一目瞭然で。

 だから俺は覚悟した。 

 もうすぐあいつがやってくる。
 今から俺が言う言葉に、あいつはどんな反応をするのか。
 驚いて、照れて、ツンとして。泣き顔が見られるなんて思うほど、俺はあいつに夢を見ちゃいないけど。
 もしも万が一あいつが涙を見せたりしたら、俺は、俺が泣かせたあいつの顔を、きっと一生忘れないだろう。

 あいつの姿が目に入る。
 俺は自分の心臓をなだめるため、一つ大きく深呼吸をした。
 テーブルの下に隠した、給料の3か月分をぎゅっと握りしめながら。


 end
   たたむ

駄文

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