Diary

No.174

mio
ケインの話、2話目でーす。


--Uが終わったそのあとで おまけ--
『君が笑ってくれるなら』(2)

 彼は長い時間ずっと、闇の中を漂っていた。時折光が見えてもすぐにまた闇に意識を覆われてしまう。
 苦しかった。苦しくて苦しくてもがいて暴れてどうにかこの苦しさから逃れようとした。一瞬の光は救いのようでいて、逆に呪いのようでもあった。
 決してつかめないのに、どんなに焦がれてもそこにはたどり着けないのに、時折あらわれては彼を誘い招き、あっという間に消え去ってしまう光。彼は光を憎みさえした。
 けれどある時、光の方から声がすることに気づいた。何を言っているのかはわからない。でも、彼を呼んでいることがわかる。
 光が射すたびに聞こえるその声は余りにも必死で耳を塞ぎたくても彼に届いた。
 なぜこの声は自分のことを呼ぶのだろう。血を吐くような声で呼ぶのだろう。どんな顔で呼ぶのだろう。泣きそうな声で呼ぶのだろう。
 その声が余りに悲痛だったから。
 だから彼は、光が射したその時に、その声の主を慰めたくなったのだ。
「……泣かない…で……」
 そう口にしたとたん、闇が大きくはらわれた。ついで差し込んでくる眩しい光。
 光が意識を覆うほどに悲痛な声は消えてゆき、彼自身も「声」のことを記憶の中のどこかに埋もれさせてしまう。
 けれどそうやって、彼はある日、目を覚ましたのだ。

つづく
たたむ

駄文

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