Diary

No.184

mio
ケインの話5本目!

--Uが終わったそのあとで おまけ--
『君が笑ってくれるなら』(5)

 雪の降りしきる寒い日だった。
 あの日、ケインはグレンダイザーを奪うために地球に潜入した。ケインならグレンダイザーから拒否されないことを分かった上での人選だった。
 投入されたのは三つの部隊。マジンガーとスペイザーを引き付けておくための戦闘部隊。デュークをグレンダイザーから引き離すための工作部隊。そしてグレンダイザーを奪取するためのケイン達三つ目の部隊。
 作戦は順調に進んでいた。スペイザーが二機しか出てこなかったのは計算外だったが、マジンガーとスペイザーは足止めした。天候を利用した幻影を使ってデュークをグレンダイザーから引き離した。グレンダイザーから攻撃されない程度の距離に同行の兵士二人を残し、ケイン一人がグレンダイザーに近づいた。案の定、グレンダイザーはケインを攻撃しなかった。
 無人のグレンダイザーを奪うなどたやすいことのはずだった。任務は達成されるはずだった。
 生身のデューク=フリードを殺し、グレンダイザーさえ奪ってしまえば地球に用はない。いきがけの駄賃にマジンガーとスペイザーさえ破壊してしまえば地球にはもう抵抗する戦力はない。たやすくベガに屈するだろう。
 しかしそこにマリアがいた。グレンダイザーに搭乗していたのはデューク一人ではなかったのだ。
「どけ。グレンダイザーを降りろ」
 ケインの任務は「グレンダイザーを奪うこと」だ。グレンダイザーに搭乗できる以上、この少女もフリードの血を引く者だろうがそんなことは関係ない。任務の邪魔をする者は排除するだけだ。ケインは少女に対して何の感情もわかなかった。
「ケイン!」
 少女はケインの名を呼んだ。けれどケインの動きは止まらない。ホルスターから出した銃を少女に向ける。
「どうしたの、ケイン! 私のことがわからないの!? 私よ!マリアよ!!」
 指を引き金に掛けることに躊躇いはなかった。
「なんでなの、ケイン! 何があったの!?  答えてよ、ケイン!!」
 少女が振り絞るように叫んだ。彼女の傍らには銃があったが、それを手にする様子もない。ただ、悲痛な表情でケインを見つめているだけだ。
 少女の目から涙がこぼれる。
 それを見た時、ほんの一瞬だけ、ケインの頭の中に充満していた靄が消えうせた。それだけで十分だった。
 マリアに向けていた銃口を自分に向け直したケインは引き金を引こうとして…引けなかった。誰かの腕がケインを掴み、そしてケインの頭はまた靄に包まれてしまった。

たたむ

駄文

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